日本人はそのアイデンティティーの拠り所を書物で確認したいという思いが強いのか「日本人論」というジャンルが確立するほど、膨大な日本文化論が書かれ、多くの読者に読まれ続けてきた。著者は時期的には第二次大戦後に限って、優に2000点をこえるという多くの日本文化論のなかから内容の優れたものを選び出し、その概要を紹介するとともに執筆時点の時代的背景や社会に与えた影響等を分析していく。その結果、一見すると日本文化についての客観的解説に見えるこれらの書物が、執筆時点における特有の社会状況の下で、日本人が欧米という外部の眼を意識しつつ自己を主観的に眺めた自画像だということ、さらに、戦後日本の社会状況の変化にともなって、日本文化論も大きな変容を経ているということを明らかにしていく。本書は、数多く存在する日本文化論についての、非常にバランスの取れた見取り図だといえよう。
『菊と刀』の過小評価が気になるおすすめ度
★★★★☆
戦後のわが国の文化論を見渡して時代区分を立て、各区分の特色を抽出するというユニークな研究を遂行した著者の努力と学識に大いに敬意を表します.しかしながら、「戦後」という時代の最初に現れた『菊と刀』の評価が十分でないので、過去数十年の間その分野の学者、研究者が一様に犯した過誤には目が向けられていません.
著者は『菊と刀』が文化人類学の研究としては異例だと言っていますが、それは現地調査が行なわれなかったことと、戦争の終結と戦後の日本占領に役立てる目的を持っていたということにとどまっています.アメリカに宣戦布告して3年8ヶ月も戦うことのできた、教育の行き届いた、八千万もの国民を擁する国の統一的な文化の型を発見したという点は、「異例」のうちには数えられていません.
しかし、これを著者一人の責任であるかのように言うのは酷でしょう.過去数十年間、誰一人として『菊と刀』のことをそのようには見なかったのですから、学界の一般的な状況を反映するものとしてはこの本の内容は妥当です.しかしながら今後の指針を求める若い人たちに奨めることは躊躇されます.
納得の出来
おすすめ度 ★★★★★
まさに夢のコラボです
。値段の割には上出来。
買って良かったと思います。