リマスター新盤の魅力おすすめ度
★★★★★
「コネチカットのアンクル・ウィギリー」(野崎孝旧訳では、「コネチ
カットのひょこひょこおじさん」)の会話のドラマの鮮やかさに、ハッと
させられました。
ユダヤ系の共同体、その知的な共同体から少し離れたところにいる主人公、
過去の思い出、友情、そうした主人公のすぐそばにいる子供たち。説明は
少なく会話がメリハリよくポンポン続く構成なので、読み取るのに少しの
苦労がありますが、こういう作風の映画(ニキータ・ミハルコフ?もっと
ダイレクトにはウッディ・アレン)に馴染みがあれば、とても面白く読む
ことができます。
柴田元幸訳は、野崎訳のデジタル・リマスター版といった趣で、細部まで
くっきり焦点が合っている訳文であるような気がします。ただし、二つの
訳を読み比べたり、原文と照らし合わせたりしたわけではなく、ただの
印象論ですが。
きっと注釈のしがいのある小説なのだと思いますが、あとがきも何もなしに
本文だけで構成されているところが、とてもクールだと思います。装丁も
ベリー・グッドです。
ただしこういう具合の精神の繊細さ(というかトンガリ具合)は、思春期
後期特有のもので、それを文章で極めて見事に掬い取っているのですが、
何というかうまく言えないのですが、とても危険な作業なのだと思います。
結局、サリンジャーは小説の筆を折り、世捨て人として一人隠れ住んで、
性狷介な伝説の作家となっていくのですが、立ち入り危険な精神の領域を
描いたからだったようにも思われてきます。後知恵かな??
すばらしい!良作!
おすすめ度 ★★★★★
非常に素晴らしい一品だと思います
。これを知らずして新しい時代のエンターテイメントは語れません。
こつこつお金を貯めてでも買う価値のある一品だと思います!